30年度採択
農業データダイナミックモデル開発コンソーシアム
センシング対応型の自律多機能ロボットを開発し、農作物の生長シミュレーションモデル手法の確立により、適正な収穫時期等を把握し、経営の安定化を図る
- 農業界代表:株式会社美土里農園
- 経済界代表:株式会社日本総合研究所
コンソーシアム形成の経緯
日本総研と慶應義塾大学は、2017年度より自律多機能ロボットMY DONKEY(以下、「DONKEY」とする。)の農業界への応用について共同研究を行ってきた。
また、日本総研は、2017年9月に栃木県茂木町と先進農業モデルの研究に関する協力協定を締結し、茂木町が間接出資をする農園である株式会社美土里農園を中心として、町の農業者とロボット活用をはじめとする先進農業モデルの検討を重ねてきた。
さらに、日本総研は、DONKEYの開発、事業化を目指し、2017年11月に慶應義塾大学、民間企業6社が参加する、「DONKEY開発コンソーシアム」を立ち上げ、2018年3月にはDONKEYプロトタイプの実証試験を茂木町で実施し、農業者から実用化への期待をいただいた。
以上の取り組みを発展させ、農業経営安定化に向けたリスクコントロール技術を農業者に提供することを目的として、ロボットが取得する小メッシュデータを活用した生長シミュレーションモデルを構築する本コンソーシアムを立ち上げ、本事業へ応募することとした。本実証事業においても引き続き、茂木町を開発の中心地として位置付け、美土里農園や提携農業者と共同検討を通して、農業の現場目線での開発と普及を推し進めていく。
- プロジェクトにかける想い
- 施設園芸では、リスク対策として窓の開閉・照明の点灯の自動制御や養液土耕システムの採用によって、生育環境を制御する技術が普及しつつある。今後、日本の農業の競争力強化を目指す上で、露地栽培や一般的なビニールハウス栽培においても、農業経営安定化に向けたリスクコントロール技術が一層重要となる。
一方で、リスクコントロールのための既存の生育モデル・収穫予測モデルは、農業者の作物の観察とそれに基づく管理等の試行錯誤が反映されておらず、現場での意思決定を支えるツールにはなっていなかった。
こうした課題を踏まえ、農業者の創意工夫が反映された作業履歴を説明変数に組み込んだ生長モデル型のダイナミックモデルの構築をしたいと考えている。
技術
既存の生育モデル・収穫予測モデルには、大きく統計的モデルと機構的モデルがあるが、統計的モデルは、農作物の成長メカニズムを考慮しない概算となること、および大量のデータが必要であることが課題であった。また、機構的モデルは、気温や日射量といった比較的取得しやすいデータを説明変数としているが、作物の生育はこれら以外の要因にも大きく影響を受けるため、説明変数を追加することで予測精度向上の余地があった。
こうした課題を受けて、本コンソーシアムでは、気温等の外部環境データに加え、農業者の作業履歴、アウトプットデータを説明変数に組み込んだ生長モデル型のダイナミックモデルの構築を目指す。
① 小メッシュでの作業履歴、アウトプットデータの取得
農業者を追従し、作業支援を行う自律多機能型ロボットを用いて、農薬散布、肥料散布の作業履歴および収穫量のアウトプットデータを取得する。さらに、小メッシュでこうしたデータを取得することで、データセットを増やすことが可能となる。
農業者は、データ取得を意識することなく、作業を行いながら、自動的に作業履歴、アウトプットデータを取得することが可能となる。
② 農業データダイナミックモデル
気温、湿度等の外部環境データに加え、①で取得した農薬、肥料散布量のデータおよび収穫量のアウトプットデータを組み込む。また、時間の概念を取り入れ、たとえば葉の成長が次の段階の光合成量と呼吸量に影響を与えるようなモデルを構築する。
③ センシングデータ見える化アプリ
①で取得した小メッシュでの作業履歴、アウトプットデータを圃場地図上で、ヒートマップ表示する。
ヒートマップ表示することで、農薬散布のばらつき具合を確認可能となる。また、地点ごとに肥料散布量と収穫量を比較することで、収穫量の増の要因を分析することが可能となる。
[更新]
将来展望
平成30年度においては実証に必要な設備機器の開発・調達が完了した。次年度以降、栽培実証を引き続き行い、事業化に繋げる。